台湾で精子検査に行った話。。。
台湾では結婚=子供という考えが未だに根強く残っていて、私も嫁と結婚した際には会社の同僚や、上司、友人などにまず聞かれたのは子供は?という事だった。
義理母も子供を強く望む1人で1年経っても子供が出来ないという事で私はあまり気乗りがしなかったが、原因があるのならなるべく早くわかった方が良いので病院で検査をする運びとなったのだった。
どちら側に原因があるのかというのもわからないので、嫁と私共に検査を受ける事に。
日本でもこういった検査を受けた事は無いので前日から少し緊張する30代のおっさんであるが覚悟を決めて病院へと向かう。
病院に着いてから名前を呼ばれると1分程の簡単な説明を受けた。内容としては個室に案内するから容器の中に精液を入れて持って来てくれとの事。
マジかよと思いながら重い足取りで個室へと向かう。。。
案内された個室は診察室の横であり、医者や患者の話声が聞こえる位の距離だった。
幸いというか当然だけど鍵は付いていたが、違った意味での緊張感に襲われ始める。
機械的な対応の看護師さんがそっと扉を閉める。
いよいよかと軽い溜息をつきつつも部屋をぐるりと見回した。部屋の中に材料はあるのかなと探してみたが、雑誌のプレイボーイの様な水着の女性のポスターが一枚張られているだけだった。
想像だけで何とか出来るような血気盛んな年齢でも無いので、すぐに諦めてスマホをポケットから取り出す自分がいた。
スマホ無い時代はどうしてたの?と思いつつ。
便利な時代になったものだと変な感謝をしながら材料を探していたのだが、特別な性癖も無いのですぐに見つかった。
しかしそこで気が付いたのは診察室が壁一枚の距離にあり、既に医者と患者との会話が聞こえている位音が駄々洩れの状態だった。
これは音が出せないな。
カバンの中にイヤホンは無い。。。
人間は視覚的に興奮を覚える人もいれば、聴覚的に興奮を覚える人もいる。
視覚的な部分が一番重要であるのだけど、音が無いというのはどうにも感情移入がしにくい。
ドラゴンボールやワンピースなどのアニメを字幕だけで見ても感情移入しにくいといえばわかってもらえるだろうか?
映画の吹き替えの声がマッチしていなかったから映画が台無しだったと感じた事がある人もいるのではないだろうか?
そのくらい音というのは重要なのだ。
しかしそんなことを言っても始まらない。
今出来る事は動画に集中する事だけだった。
昔はエロ本という紙媒体でも満足出来ていたが、技術の進歩により私も進化している事に気付かされる。
音が無いとエロであるのにもどこか滑稽なものにすら見えて来る。
制限時間もあるので、精神を集中して気持ちを高めていく。頭の中で自分なりの音を膨らませていき、作業を進めていく。
しかしまた問題が発生する。クライマックスを迎えるにあたり、自分の精子を入れ物に出さなくてはいけないという事に気付く。
今は左手にスマホ、右手で。という状況だけど。。。
机にスマホを置き、スマホが見えにくいので中腰となり左手で入れ物を持つ。
こんな場所で何しているんだという自問自答を乗り越え、コンセントレーションを高めていった。
吉祥寺のウサイン・ボルトと呼ばれていたスピード感のある私がこんなに手こずるとは。
※呼ばれた事ないですけど
そして無事に走り抜けた。
こんなプレッシャーの中で行為をしたのは始めてという事もありぐったりとしてしまった。
病室から出て来たそんな私を見て嫁がめっちゃ笑っていた。
笑えばいいよ。
病院を出た後に聞えたいつもはイラっとするオートバイのけたたましい騒音もどこか素敵な旋律のように感じた。