台湾で体外受精をするという決断。
前回書いた不妊検査の結果、私の精子は正常であったが、嫁は子宮につながる管のような物が両方とも詰まっていて医者が言うにはほぼ妊娠の可能性が無いとの結果だった。
嫁も私も当然落ち込んでいたが、下を向いているだけでは何も始まらない。
私の考えとしては、子供が欲しいという気持ちはあるものの、自然に授かる事が出来なければそれはそれで仕方が無いという考えてあったが、嫁は母親からもプレッシャーもあってかどうしても子供が欲しいという事であった。
出来るだけ嫁の考えを尊重して話し合った結果、体外受精という方法を取るという結果となった。
私は体外受精についての知識など全く無かったのだが、調べていくと台湾でもそれなりの金額が掛かるという事はわかった。
台湾でも日本と同じく保険などの適用が出来るわけでもなく、金額にして10萬元~15萬元(約35万~50万円)かかり、一回で成功する補償も無い、失敗した場合はまた繰り返しであり場合によってはほぼ一から取り組む事となる。
又、体外受精は女性側の年齢が高くなれななる程妊娠の可能性の低くなるという事であり、なるべく早く行うという事に越した事はなく、すぐに実行する決心をしたのだった。
最初は地元の大きな病院に行って診察を受けていたのだが、産婦人科の医者の業務的な対応に嫁が不信感を抱いた事から、別の病院を探す事になった。
2つ目に通った病院は体外受精の専門機関であり、卵子に影響のあるレントゲンの様な設備は置いていなく、医師も丁寧に説明をしてくれ良い印象だった事からこの病院で行う事へと決めた。
当初、私は体外受精というのは精子と卵子を取って、受精させて女性の中に戻す位のイメージであり、女性側が辛い思いをするというのは全く知らなかった。
体外受精を進めていく中で知った事として、卵子は排卵のたびに1つしか出来ないのだが、卵子を複数採取出来るように毎日注射をお腹に刺したり、それによって気分が優れなくなるなど、自分の考えていたよりも女性側への負担はかなり大きいものであった。
そして毎日注射をして卵子を増やす作業をしても確実に良い卵子が複数採取出来るわけでは無く、嫁の場合は4個だったと記憶している。これも人によって差があるそうで1回で2~3個取れる人もいれば十数個取れる人もいるらしい。
その取れた卵子を培養し、精子と受精させ体内に戻すという事が行われる。
体内に戻す作業も簡単な物ではなく麻酔を伴い、嫁の前に体内に戻す際に手術していた女性は気分が優れずに何度も吐いてしまっていたそうだった。
嫁の場合は体内に移植する際に3個の動きが良い受精卵が戻される事となった。受精卵を体内に戻しても、きちんと着床する確率は高くなく20~30%と言われているので一度に複数を戻すというわけだ。
運が良い人は複数着床するので体外受精者には双子や3つ子が多いというのも初めてしった事だった。
又、無事妊娠した場合も体外受精の場合は自然妊娠よりも流産の可能性が2倍以上となり、20~25%と高くなる。
妊娠後に流産というのはショックがかなり大きいだろうから、この辺りのリスクもきちんと理解してから行うべきであろう。
手術後に妊娠しているかどうかがわかるのは2週間後であり、そこで陰性となった場合は失敗という事だ。卵子がたくさん採取出来ていた方であれば再度移植手術が出来るが、私達の場合は既に4個取れた中の3個を使ってしまっていた為、失敗した場合はもう一度最初からといった流れであった。
落ち着かない2週間を過ごした。
嫁はすぐに妊娠したかの検査をしたがったが、2週間後までは待つように良い、落ち着いた生活を送るように取り組んだ。
2週間が過ぎ検査を行った。
結果は陰性。失敗であった。
誰が悪いわけでもないが、女性側は自分に責任を感じてしまうようで、私の嫁も例外に漏れず自分を責めるような発言をしていた。
「焦らずにゆっくりでいいよ」とは言う私の言葉とは裏腹に嫁の体、精神的な面も心配であり、金銭的な問題もあるので私自身もかなりショックを受けたがそれを表に出す事も出来ない状況だった。
夏が終わり年末も近づいてくる中、新年には日本への帰省、旧正月の際に香港、中国への帰省が予定されていたので2回目をするにしても来年以降にしようと話し合いで決まったのだった。
続く