【台中生活】Taichung Life

台湾の台中での日常生活のあれこれを書いてます。

部下に『いい加減な人』と言われてほっこりした

会社から人事異動が発令されて現在働いている部署を去る事が決まった。私の勤めている会社の人事異動は大体が3~5年に一回程度で事業会社を跨ぐ事は少ない。ただ私が手にした辞令はそうではなかった。

会社から異動の理由は上へのステップという風に説明を受けたが、人見知り気質な私にとってどんなに栄転だと祭り上げられても、子供の頃に遊んだドラクエのセーブが消えた時に流れる不快な音楽が頭を駆け巡り、またレベル1からやり直しかといった感じで苦痛なお告げにしか聞こえなかった。

 

私はある程度人間関係が構築出来ている中では力を発揮出来るが、そうでないと気が小さくなる傾向がある。

例えば、小学校では高学年になって人間関係が構築出来た頃にはクラスの人気者的な立ち位置であった。修学旅行の時のグループ決めでは私と一緒になりたいクラスメートが多すぎてくじ引きになったくらいの人生絶頂期をここで経験した。

ただ、受験で地元から離れた中学校へ入学したら、そこでは既に幼稚園、小学校から仲良しグループが出来ていた事もあり私は大人しく中学時代を過ごしたのだった。

分かりやすい位の内弁慶とでもいうのだろうか、地元ではどちらかというと陽キャだけど、外国へ行ったら何も悪い事してないのにぺこぺこして「すみません」連呼してるチー牛へと変身する逆アニメヒーローである。

なんてかっこ悪いんだろうか…

 

そんなチキンな私は異動の話を部下の女性に伝える事にした。彼女は年齢は私より10歳程上で立場上は部下であったが社会人的には先輩であり、入社したての頃から私の足りない部分をズバッと言ってくれる貴重な存在である。

そんな彼女を誘い、よく通った蕎麦屋へと歩いて向かう。もうここへも来れなくなるなと思うと春先なのに風が冷たく感じる。

個室のような仕切りがあるのでゆったりできるのが好きな昔ながらのお店だ。スタッフが持って来たお茶をすすりながらメニューも見ずに親子丼セットを頼んだ。彼女も同じものを頼む。

 

「何か話しがあるんですか?異動になったとか?」

 

彼女が切り出す。流石ベテランである。察しが良い。

 

「そうなんだよね、今までお世話になったから伝えたくて」と私が続ける

 

「寂しくなりますね」と言われるが、月9のラブストーリーのような展開にはならずに今までの感謝の気持ちを伝えた。

 

すると彼女は私がどんな人だったかを語りだした。止めるのもあれなので照れ臭いなと思いながら聞いていたらある言葉に反応してしまった。

 

「一言でいうといい加減な人だったね」

 

なんだそれ…

たしかにプライベートはいい加減な部分はあるけど、仕事は結構ちゃんとやってるつもりだったんだけどなと心の中で少し思ったが、他人から見たらそうなのかなと思い特に反論はしなかった。というか出来なかった。

 

私の不服そうな反応を楽しんだのか、少しして彼女は

 

「良い意味でですよ」

と言ってきた。

 

「いい加減な人って言われて良い意味にはとれないですよ」

と言い返す私。

 

彼女は不機嫌そうな私を横目にニコニコしながら話を続けた。

「一緒に働いていて、仕事のメリハリや人への対応の加減が上手くてとても働きやすい環境でしたよ」

 

いい加減じゃなくて良い加減なんですよ」

とアクセントを強調してわかりやすく教えてくれた。

 

一本取られたなと思いつつ、尊敬していた人生の先輩に褒められて照れ臭かったが認められたようで素直に嬉しかった。

 

 

新天地でも良い加減に働こうと思った20代の春の話。

 

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